第960回例会(FAX例会)

第960回例会(FAX例会)

                          丹羽ライオンズクラブ

                           会長  増田 収一

長い冬が終わり、多くの人に好かれる春がやってきました。今もなお、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、お花見の自粛が発令されるなどいつもとは違う「春」となっています。

そんな先が見通せない現状ではりますが、この時期に忘れてはならない出来事がもうひとつあります。平成23年3月11日に起きた東日本大震災です。今年で、あれから9年がたちました。NHKの連続テレビ小説「あまちゃん」の効果もあって注目を集めた岩手県沿岸部を走る三陸鉄道が昨年3月に全線開通するなど、復興への歩みはハード面も含めて着実に進められています。

「復興」 災害が起きるたびに、この言葉は使われます。ですが、どういう状態に達すれば、「復興した」と言えるのでしょうか。東北3県で言えば、津波に流された建物が再建されたり、鉄道が開通したりと目に見える形での変化はありますが、私は本当に復興しなければならないものは、目には見えない「心の状態」ではないかなと思っています。目の前で郷里が津波や地震で壊されていき、大切な方を亡くされた方も大勢います。あの絶望感から脱却するのに9年という月日では短く、今もまだ悲しみから抜け出せたとは言えない方は多いかと思います。 普段は明るく振る舞っていても、ふとした弾みで、「かさぶた」のようなものが剥がれ、傷口が痛み出してしまう。心の傷が癒えたわけではなく、心の傷口に封をしていた「かさぶた」が分厚くなっているだけなのだと。そんな風に思っています。

そんな傷口への特効薬は恐らくないのではないかと思っています。ただ、一つ良薬といえるものがあるとすれば、それは人と人との助け合いではないかと思います。寄り添うこと、と言い換えられるかもしれません。震災を経験した人から機会があれば話を聞きに行ったり、実際に足を運んで交流したり、ボランティアをしたり。そういった心の交流が長い年月をかけて、傷を癒やしていくのかなと信じています。

私は、そんな良薬になれる活動の1つが、ライオンズクラブの存在だとも考えています。一人ではなかなかできないことも、みんなで集まれば何かまとまった形で行動ができることもあるのかなと思います。一人一人の募金も大勢でやれば、それだけ大きな成果になります。喜びもそれだけ大きいものになります。

3月11日が近くなると、よくテレビや新聞であの日についての報道が増え、「風化」について指摘されます。ただ、残念ながら人の記憶は薄れるものです。大切なのは、風化はさせないと多くの人たちが思い、それぞれが忘れないことなのかなと思っています。時間は不可逆的で元には戻りません。震災前の姿にすべてを元通りにすることは不可能です。ですが、新しい東北が少しでも良い方向に進むように悲しみも喜びも分かち合えるような人に私もなれたらなと、いつも考えています。これからも、そんな思いで、気持ちを引き締めて社会と向き合っていきたいと思っています、よろしくお願いいたします。異例のFAX例会になっておりますが、ご理解いただき、これで会長の挨拶といたします。