第961回例会(FAX例会)

第961回例会(FAX例会)

      丹羽ライオンズクラブ

                         会長 増田 収一

今も世界の至る所で多くのテロ事件が起きています。悲しみと怒りの連鎖は止まらず、テロによる犠牲者はなくなりません。そんな中で、記憶から薄らいできていますが、今から25年前の1995年3月20日、世界でもまれに見る化学兵器を利用した無差別テロ事件が起きました。多くの官僚たちも利用する霞ヶ関駅で、地下鉄サリン事件です。約6300人が負傷し、14人が亡くなられました。今も身体に後遺症が残り、苦しむ人たちがいます。オウム真理教の犯行でした。

最近、あるネット記事が目にとまりました。事件発生から25年という節目に書かれた記事で、実行犯の一人だった医師免許を持つ林郁夫(無期懲役)を取り調べた刑事の話でした。この刑事による林郁夫の全面自供によって、教団施設への強制捜査が実施され、教団解体へとつながっていったそうです。刑事は大手柄を立てたということですが、一体どうやって、洗脳状態にある林郁夫の心を解いていったのだろうかと興味があったのです。

記事によると、1つは、取り調べの間、「先生」という呼称で呼び続けたという。林郁夫はオウム真理教に入る前は優秀な心臓外科医だったこともあり、入団前の意識に少しでも戻ってもらいたいという狙いと戦略があったのだそうです。2つ目は、机を指の腹で一定のリズムを刻みながら取り調べたということでした。リズムとは、生まれてくる前、母親の胎内にいた時に聞いていたであろう心臓の鼓動。心臓外科医だったこともあり、心臓の鼓動は聞き慣れた音だったこともあったかもしれません。取調室で、心臓の鼓動のリズムを刻まれながら、「先生」と呼び続けられることによって、オウム真理教でまとっていた林郁夫の心は自然に解けていき、「サリンをまきました」との自供につながり、全面解決に向かっていったそうです

私は、この記事を読み、人の心の不思議さに考えさせられました。犯罪も何者かの心によって引き起こされるもので、究極的には人をあやめたり、テロ事件に結びついていきます。でも、心は変わることもあるのだとも思ったのです。犯罪は許されるものではないですが、人が持つ「心」について改めて感じ入ったところです。と同時に、その心のひだに分け入っていく血の通った刑事のプロ意識にも感心させられました。

オウム真理教の事件から25年が経ち、事件を知らない若者も増えてきました。オウム真理教も、当時の若者たちの社会的な不安な心を包み込み、教団に取り込んでいきました。平成に起きた事件は、平成のうちに死刑が執行されましたが、令和になったこれからも、いつまたそんな教団が生まれないとも限りません。人間に心がある限り、犯罪がなくならないのと同じように。

世界では今も、犯罪の究極な形であるテロ事件はやみません。対立と憎しみが続いています。地球上で、文明が始まってから、テロ事件を含む戦争がなくなった日は恐らくないでしょう。いつもこの地球上のどこかで、家族など大切な人を失い、涙する人がいます。

ただ、その憎しみの連鎖を絶とうと、知恵を絞り続けていくことは、今を生きる者として必要だと思います。ライオンズクラブとしても、そんな平和な社会への一歩に貢献できるように、地域という足元からこつこつと平和への歩みを続けて行きたいと思っております。

第961回例会は、メンバースピーチを予定しておりましたが、4月7日に、国の緊急事態宣言、 4月10日には、愛知県独自の緊急事態宣言が発出されました。メンバーの健康を第一に考え、FAX例会にさせて頂きますが。コロナウイルス感染拡大が終息できます様に、メンバー一人一人が、今出来る事を行い、一日でも、早く通常通りの例会が開催できます事を、お願い申し上げまして、例会挨拶文に変えさせて頂きます。